パギさんVOL．18　茶臼山『ホタル』

　　　
　２００２．５．１　更新

路上的旅人　趙博さんを撮る　VOL．１８
＜不定期更新中＞

天王寺茶臼山舞台で映画『ホタル』を演じるパギさん
写真は、高倉健演じる山岡が舟の上でハーモニカを吹くシーン

昨年来、趙さんが予告していた「歌うキネマ」がついに大阪でそのベールを脱いだ。
生前、趙さんが師と仰ぐマルセ太郎が得意としていた「スクリーンのない映画館」を
趙さん自身が「いつか真似たい」と思いながら、構想を温めていた「芸」である。
マルセ太郎を師と仰ぐ・・と言うのは、正しい表現ではない。マルセは生涯弟子をとらなかった。
マルセカンパニーという芝居劇団は率いていたが、彼独自の境地を開いた「ピン芸」と言われる
サルや鳥の形態模写、一本の映画を丸ごと演じきると言う「芸」に関しては弟子はいなかった。
趙さんは、マルセさんと親しくつき合ううちに、彼から様々な影響・薫陶を受け、直接習わなくても
五感でマルセ太郎のエキスを身体中に染み込ませたのだろう。今回、マルセ太郎ゆかりの
大阪でその類い希な芸を開花させたことに大きな拍手を送りたい。「マルセ伝承」ではなく、
「趙博の新たな挑戦」が新しい「趙博伝説」を作り上げた。現場に幸運にも立ち会うことができた
人々の感想に、私の拙い写真を添えて報告としたい。会場の興奮と感動が伝われば幸いである。

立ち上がったり座ったり、畳２畳の空間に「趙博の小宇宙」が出現し、目を瞑ると茶臼山舞台に一匹のホタルが舞い降りた
事前に映画を見た者も、まだ「ホタル」を知らない者も、趙博演じるスクリーンのない映画館に引き込まれた

■　パギさんＨＰ掲示板の書き込みから　■
＜掲載協力　パギやん参上！ＨＰ管理人leafさん＞

●パギやん題名：「ホタル」は光りましたか… 投稿日 : 2002年4月19日<金>00時30分/大阪府

　無我夢中で、本人はまだ「対象化」できてません。
路上さん、カオラニャイニョさん、ぶうちサン、西田さん、
にっしゃん、マキさん、チャンジャさん、ヨルチャさん、
ご感想、ありがとうございました。あと、個人的にも
メールでたくさん「ご意見・ご感想」をいただきました。

　始まったばかりです。まだまだ良くなります！！

　私の今年の目標は、この「歌うキネマ」シリーズの研鑽と
「ライヴ録音ＣＤ製作」です。もう、荒削りのよさ－－に
甘えてはいられませんので。

　　４０人のお客様、ありがとうございました。
　　リクエストがあれば、「２畳分の舞台」で、どこでも演じます。

　　ほな、今度は２０日に藤井寺で。

●マキクニヒコ題名：次も楽しみです
　　投稿日 : 2002年4月18日<木>08時47分/大阪府/男性/33才

歌うキネマ、行ってよかったです。
映像で見るとずっとその世界に浸ってしまえるのですが、話だけだとところどころで現実に戻ることになる。
実はそこの虚構と現実の行ったり来たりが面白いのだと思いました。
イメージを膨らませているときにぽそっと入る趙さんのコメント、そしてすぐに「ホタル」の世界に引き戻される。緊張と緩和。
映画で見るよりも伝わってくる何かがあります。
そしてきっと趙さんの編集が加わっているはずです。
趙さんがどこを強調し、どこを捨てたのか、そんなことも気にしながらビデオを観たいと思います。
信じがたいけど（？）趙さんが田中裕子に見えました。一瞬。
それにしても、趙さん何回「ホタル」を観たのですか？

●にっしゃん題名：歌うキネマを見に行きましょう！
　　投稿日 : 2002年4月18日<木>02時25分/大阪府/男性/44才

出だしこそマルセさんの影が見えかくれしてた様ですが（そんなにマルセさんを知りませんので）、喋りがこなれギターを弾いてからパギやん節の世界に滑り込んで行ったみたいです。
パギやん独自の解釈で笑わせてくれる時もあるかと思えば、キメるシーンではグイっと引き付けてくれるし。「ホタル」の名場面が忠実に私の頭の中に再現されてました。（涙を流している女性もいましたね）
一番感じたのは演じてるパギさん自身が「ノッてる」事です。
演じる側がノってると、見ている私達が知らぬ間にパギさんの世界にハマってました。
アっと言う間の一時間半でした、それにしてもあれだけのセリフをほぼ間違いなく覚えていられたのは凄～い！
４回通し券買いましたが、今回だけでも結構値うちがありました、次回が期待と勝負の時ですね。
稚拙な文章ですみませ～ん。

● Res：西田題名：ホタル投稿日 : 2002年4月18日<木>08時26分

東京、神戸各方面からの観客。満席のなかで「ホタル」が始まりました｡ギターでテーマ曲が流れ、ぐいぐいと「ホタル」の世界に引き込まれていきました｡冨屋のおかあさんの「実の母親なら、自分の子供に死ねなんていわんじゃろう。」の台詞真に迫って胸にｸﾞｯと来ました。
　＞演じる側がノってると、見ている私達が知らぬ間にパギさんの世界にハマってました。
映画はイメージより現実に近く、芝居は観ている者の中にイメージが動いていてその波長がピッタリと一体感になった時は最高。
まさに「ホタル」はそうでしたね。
　夫婦愛、特攻隊、戦争責任、一人の人物の生き方等、今どうして趙さんがこのテーマを選んで私達に投げかけてくれたのか？
大きな宿題を貰ったように感じました｡
　最後のゲスト出演の高倉健さん、よかったですね。

４月２５日の朝日新聞夕刊に掲載された記事です
「話すことは何もない」と健さんのぶっきらぼうな声色をまねたかと思うと、「おじさんは特攻に行ったの？」
と少女の声になる。体の前でてのひらをひっくり返して「オーバーラップ」を表す、苦し紛れのしぐさには、
会場がドッとわいた。　（中略）　最後は健さんに戻って「美しいのは戦争ではない。命と魂が美しいのです」
と映画にはないセリフで締めた。

『ホタル』

この作品は高倉の「今、語り継がないと忘れ去られてしまうようなことも
映画なら残していけるんですよね」という言葉から始まった。

あるテレビで知覧の母・鳥濱トメさんのことを取り上げた番組を見た高倉は、降旗監督、坂上プロデューサーと知覧を訪れ、半世紀前に数々の悲劇を生んだその地で、言い知れぬ痛みと深い衝撃をともなった幾つもの人々の“想い”に出会う。

--あの時代に置き去りになったままの彼らの“想い”を語り継いでいきたい--

その日からこの映画の企画が動き出した。
（ホタル解説ＨＰサイトより引用）

この映画を見た時、きっと趙さんも高倉健と同じことを思ったに違いない
映画中の山岡秀治・高倉健、そして趙博
この３人が出会ったことで、我々は、あの時代に置き去りになったままの彼らの“想い”に
出逢うことができたのだ

始まってすぐは、舞台に立っているのがマルセさんのような錯覚に陥った。目を瞑れば、在りし日のマルセ太郎が蘇ってくるようだった。マルセ太郎の霊が憑依したような迫真の演技に引き込まれるうちに、やがて舞台の趙さんの声が高倉健や田中裕子に聞こえて来る。ギターでテーマ曲を弾く頃には、もうすっかり“チョウ・バクの世界”である。

歌や韓国語のシーンがふんだんに出てくる『ホタル』は、まさしく趙さんのお得意とする世界で、演じやすく得している部分かも知れないが、それを差し引き、厳しく粗を探してもお釣りが来るような素晴らしさであった。最初の方こそ、少し緊張しているのか、早口に聞こえたが、高倉健演じる山岡がハーモニカを吹くシーンでは、会場全体の魂が揺さぶられるような「小宇宙」となった。「二人でひとつの命じゃろうが」のセリフは鳥肌が立ちそうなほど似ていた。終わった翌日は、咽が潰れるようだったと聞いたが、あの熱演では無理もない。でも、高倉健よりも田中裕子の方がよく似ていたと思ったのは私だけだろうか。
『ホタル』がこれほど良いと、次回の『マルコムＸ』はどんなだろう。ホタルを超えるのは難しいのではないか・・・色んな声が聞こえて来そうだが、きっと趙さんは、見事に我々の心配を裏切ってくれることだろう。極限のプレッシャーに襲われた時、人は信じられない集中力を見せる。趙さんはそれができる人である。
今回の『ホタル』も回を重ねる毎に、より熟成され、深まって行くに違いない。進化する『趙博』と深化する『ホタル』に期待したい。マルセ中毒の会の中島さんから「趙さん、歌よりこっちの方が良いかも知れないよ」と言われ、嬉しくも複雑な気分だったそうだが、私もそう思う。決して、歌より上手いと言うことではない。共通しているようでまったく別の新境地に足を踏み込んだ趙さんには、これまでどおり“二足の草鞋”で頑張ってもらいたい。予備校講師でミュージシャン。そこに芝居俳優や芸人が加わっても、稀代のエンターティナー・趙博に変わりはなく、物まねではない唯一無二のチョウ・バクがいるに違いない。趙さんには、メジャーになってもらうよりも、オンリーワンの芸人になってもらいたいと思うのが、私の正直な気持ちである。　　路上的旅人