路上的旅人 プロデュース　音楽イベント
　からほりろじむ

VOL．４　　大道芸　　風人(WHOJIN)　 ＪＵＮ 　ｺﾝﾋﾟｭｰﾀと民族楽器とﾀﾞﾝｽのｺﾗﾎﾞﾚｰｼｮﾝ　 大道芸で磨いたダンスを、仲間５人で演じるパフォーマンスは見応え十分。全く違うジャンルの コラボレーション。五感をすべて使う即興表現が、見る者に新鮮な驚きを与えるはず。

路上で繰り広げられたパフォーマンスに見とれる人々 「JUM I〜受容する未来」　 ダンサー２名とミュージシャン３名の編成 ■　出演者 舞踏 miki lyn talyer jun 音楽 創作楽器/上野泰（あがのたい） 尺八/福本卓道（ふくもとたくどう） ディジュリドウ/はくさんまさたか 出番前にカメラを向けると笑顔でポーズを取ってくれました 　　　 先程の柔和な顔と違って迫真の演技です 風人ＪＵＮさんのパフォーマンスでからほり亭前の空気がちょっと変わったかな・・というくらいの すごさを感じました。幻想的な調べにのって踊るＪＵＮさんたちの美しい動きの中に 内なる声を受けたような気がしました。 mokumu 　　　　　　　　　 　空堀路地夢のトリを務めた『風人』JUNさんの演技を見るのは、今回がまったく初めてである。お会いするのも今回が２回目。出演者の選定に慎重で、好きな人以外は声を掛けない“こだわり派”の僕にしては、珍しいと言うより、異例中の異例である。 　おーまきちまきさんは、出てほしくて出てほしくてたまらなかった意中の人であり、衣笠さんといい、TAMAさんといい、以前から知っていて、是非とも出演してほしかった人たちである。いわば、主催者の僕が一番のファンであり、来てくれたお客さんよりも、自分自身が一番喜んでいるといった出演者の人選であった。知り合いが紹介してくれたお母さんコーラスの「おしゃべり天使」や、唯一のアマチュアバンドであり、長年の友人であるオーズは別として、出演をお願いするのは、ファンとして僕自身が出てほしいと思えるミュージシャンに声を掛けたのだが、唯一『風人』だけが、正体も芸風も内容も知らずに出演を声掛けたグループだったのである。 　５月のある日、北区中崎町の路上を歩いていた僕は、前から会いたかった憧れの人“路上詩人・軌保博光”さんに偶然バッタリと出会ったのだ。（このことについては、路上的旅人写真日記『路上で出逢った一期一会』で書いていますので見てください。） 　軌保さんが大阪に来る度に泊まっていくのが、JUNさんのお店「天人（あまんと）」である。天人は、１００年以上前の古い長屋を、建築は全く素人の若者達が、大工道具を持ち寄って集まり、作ってしまったという楽しいお店である。昼間はお茶や軽食を出す喫茶店のようなものだが、夜にはアルコールもメニューに加わり、いろんなジャンルの演奏・・演劇・ライブ・パフォーマンスが繰り広げられ、時には、英語教室や映画の鑑賞会も開かれるという自由で楽しい異次元空間である。また、近所のお年寄りや小学生までが自然と集まってくる不思議なフリースペースでもある。軌保さんの紹介でそこを訪れた時に、JUNさんとは初めて会った。 　髪の長い筋肉質で大柄な若者は、初めて会った髭面の怪しい風体の僕に、訝る様子もなくお店に招き入れてくれた。きれいな目をしていた。「軌保さんの紹介で探して来ました。路上的旅人という写真集を作っています。」そう言って自己紹介すると、お店のことや中崎町のことを色々と話してくれたのだ。古ぼけた壁の色や、傷がいった柱や黒ずんだ天井、それらを見た途端に、僕はたちまち天人のことが気に入ってしまったのだ。同時にJUNさんのことも。人を好きになるのは、出会いの一瞬で決まることもある。 　中崎町は、空堀と並んで、最近注目を集めている話題の町である。戦災を免れた長屋や路地が残り、都会の中にありながら、そこだけが昭和４０年代にタイムスリップしたような感覚に陥る不思議な、心和む空間である。空堀に惚れ込んだ僕が、中崎町に惚れ込み移り住んだJUNさんと初めて会ったような気がせず、ともだちになれたのは不思議なことではないのかも知れない。初対面でいきなり空堀路地夢の話を持ち出し、出演を頼んでしまった。それにしても、今思い出してもJUNさんとの出会いは不思議と言うしかない。 　大道芸が始まった。初めて見る楽器が、聞いたこともない音を奏でる。シンセサイザーが出すデジタル音のようであり、遠くアジアやアフリカで演奏される民族楽器のようでもある。不思議な、でも、心落ち着く音色に誘（いざなわれる）ように、赤い布ですっぽり全身を覆った二人が路上に現れた。中に入っているのがJUNさんと彼女のテイラー美季さんである。ゆったりとした動きが不思議な“なにか”を表現している。誰もが息を飲み食い入るように路上の舞台を見つめる。やがて、赤い布から般若の面とオカメの能面を被った男女が現れる。着物を一枚ずつ脱いでいくと、研ぎ澄まされた美しい肉体が現れた。女性の着物の袖からは、極彩色に彩られたタトゥーが見える。ダンスと聞いていたが、これはいったい何なのだろうか。舞踏というのか舞踊というのか、よく分からないけど、身体表現としては凄いことが目の前で起こっているというのは分かった。もう時計は５時を回っている。ライブが始まってから２時間以上経っているのに、最後の出演者『風人』の舞台を誰も帰ろうともせず、ジッと見ていた。 　長く不思議な時間が終わった。会場からは大きな拍手が沸き上がる。地元ちんどん屋さんのジャージ川口さんも加わって、アンコールの共演が始まった。いつ終わるともなく演奏は続いた。満足そうなお客さんの顔があった。新聞社のカメラマンのフラッシュが光る中、あちらこちらで成功を祝う握手を求められた。からほり亭の路地に、自分の写真展の額が西陽を受けて光っている。ゲストで見に来て下さった清水哲さんも喜んでくれた。大きな仕事をやり遂げた満足感が身体全体を包んでいる。人と人の出会いは本当に不思議だが楽しい。JUNさんとの友情はまだ始まったばかりだ。次はどんなシーンで僕をワクワクさせてくれるのだろう。 JUNさんのお店　天人　のHPです